中国の電力供給
中国における都市部の一般的な供給電圧は工場などの三相電力が380V、家庭用の単相電力が220Vとなっており、工場内の単相電力は、変圧器二次側スター結線の中性点と一相間の電圧$$\frac{380}{\sqrt[2]{3}}=219.39(V)$$を使います。
図のような感じになります。ちなみにR,S,T,Eという表記は日本ならではのもので、海外ではL1,L2,L3,N,Eという表記が一般的です。中国から機械を買うと、制御盤にあるNはL1-N間が上記のように取っている場合が多いので、Zをリレー回路とすると、そのままモーターだけ日本仕様の200-220Vに変えてもL1-Nに200-220Vかけないと動きません、日本では線間200Vでも、L1-N間は相電圧115V程度しかないです。その場合はNをL2にするなどして、電圧がかかるようにします。
電力会社からの供給電圧は日本では工場などは三相200Vが一般的ですが、電圧は送電ー受電や負荷の状態で刻々変化します。電気事業法においては供給電圧100Vの場合は101V±6V、200Vの場合は202V±20Vの範囲に収めなければならないとされています。また、それゆえ電気工作物もその範囲では動作するようになっています。
中国のモーター事情
中国の誘導モーターは基本的にモーター屋さんの受注生産です。もちろん、大手の電機メーカーもあって、DCブラシレスだのステッピングモーター、サーボモーターは大手のやつを買うことになりますが、汎用モーターはだいたいモーター屋さんを呼んで作ってもらいます。そして、焼けたりして故障すると、固定子巻き線を巻きなおして修理します。めったに買いません。昔の日本もそうでしたね、モーターの巻替え屋はあちこちにありました、なんせ当時モーター高かったですから。
中国の汎用モーターは安いです。日本のメーカー(日立や三菱)の1/6くらいじゃないでしょうか?安いのになぜ巻き替えるのか?それはやはり人件費が安いからです。確かに、IT関係、商社、金融関係、それと製造業でも管理部門の人間の給料は高くなりました、しかし工場で働く一般工員の給料は日本の1/3~1/4でしょうか?農村部の方へ行くともっと安いと思います。まだまだ、そんな状態なので、中国製機械類の値段は日本とくらべてべらぼうに安いです。
中国製モーターの配線
中国製のモーターはほとんどスターデルタモーターです。なので、結線を変えれば、日本の電圧でも十分使えます。スター結線で380V用なので、デルタ結線にすると線間電圧$\frac{380}{\sqrt[2]{3}}=219.65(V)$になるので三相200Vで十分駆動できます。
中国仕様のデフォルトではX,Y,Z端子は一括で短絡されています。U,V,Wに380V電源線を接続します。次に日本で使う場合はX,Y,Zを切り離して、U-Y,V-Z,W-Xを短絡します各端子UY,VZ,WXに200V電源線を接続します。
上の写真は実際に仕入れた中国製のモーターです、上の列はX,Y,Z 赤い2本はブレーキ付モーターのためブレーキを動作させるための線です。多分直流ブレーキかと思われます。下の列がU,V,Wです。今回は、わざわざ、気をきかせて日本仕様に結線して、おまけに銘板も日本向けになっています、なぜかというと中国の周波数は50Hzですが、銘板は関西仕様の60Hzとなっていますから。でも所詮380V用の転用にすぎません。
さて、ここで一つ問題があります。もともと、デルタの各端子間の定格電圧は380/√3=219.39だったはずです。200Vに落とすとどうなるでしょう? 線電流はもともとの電流より小さくなりますので、熱的には問題ありませんが、219.39Vをかけたときよりトルクが落ちます。トルクは電圧の2乗に比例しますので
$$(\frac{200}{219.39})^2=0.831$$
となってしまいます。17%近くもトルクが落ちてしまいますので、たとえば3.7kwのモーターを使ってるならば、中国製だと1ランクあげて5.5kwにするのもいいかと思います、それでもかなり安いですから。でも、はじめから日本向けの200Vで頼めばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、特注は少し高くつきますのでね。
補足
もし、直流ブレーキ用整流器が380V入力のままであった場合、マルチタップのダウントランス 200,220V→380,400,440Vなどのタップが付いたものを、逆につないでアップトランスとして、ブレーキだけ380V入力として使えます。
コメント